仙台地方裁判所古川支部 事件番号不詳 判決
主文
被告人石川清治郎、被告人福原慶治郎を各懲役六月に、被告人岩崎英夫を懲役八月に処する。
但し、被告人等に対し、いずれも本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は、全部被告人等の連帯負担とする。
被告人石川清治郎に対する公訴中同被告人が被告人岩崎英夫、同福原清治郎と共謀し、判示第一の二及被告人岩崎英夫と共謀し、判示第二の犯行をしたとの起訴事実は無罪
理由
被告人石川清治郎は宮城県志田郡志田村第一農業協同組合長理事を、被告人岩崎英夫は同組合専務理事を、被告人福原慶治郎は同組合常務理事をしていたものであるが右在職中
第一、一、被告人等三名は共謀のうえ、米の供出は生産者がその生産した米でなければ出来ないのに拘らず、組合経費にあてる目的で、供出米の検査に際し俵から刺しとられた所謂刺米を組合において保管しているのを奇貨とし恰も被告人福原慶治郎が生産した米の如く装い供出し、その代金を騙取しようと企て、昭和二十四年二月七日右刺米梗玄米十俵を恰も被告人福原慶治郎が生産した米の如く装い匿名供出の手続をなし右組合倉庫において食糧検査官伊藤福雄に対し検査を請求し、同人をして正当な供出米と誤信せしめて検査の上受領せしめよつて、食糧検査官渋谷勇夫をして、同月十九日右十俵を含め他の供出米とも合計三百十六俵分代金百三十九万四千六百三十四円の主要食糧買入代金の支払証票一通を発行せしめ、右支払証票に基き、宮城県販売農業協同組合連合会(以下県販連と略称する)を通じ宮城県信用農業協同組合連合会(以下県信連と略称する)に右代金の支払を請求し、その係員をして正当な供出米代金の請求と誤信せしめ同年三月一日県信連をして、県信連に対する志田村第一農業協同組合の予金としてその口座に右代金百三十九万四千六百三十四円を振り込ましめよつて、前記十俵分の供出代金四万四千四十円の財産上不法の利益を得
二、被告人岩崎英夫、同福原慶治郎は共謀のうえ前同様組合経費にあてる為刺米を供出してその代金を騙取しようと企て、同年二月二十二日刺米粳玄米二俵を恰も被告人福原慶治郎が生産した米の如く装い匿名供出の手続をして前記組合倉庫において食糧検査官伊藤福雄に対し検査を請求し同人をして正当な供出米と誤信せしめ検査のうえ受領せしめ、食糧検査官渋谷勇夫をして同年三月一日右二俵分を含め他の供出米とも三百八十九俵分代金百七十二万二千五百七十六円の主要食糧買入代金支払証票を発行せしめ、これに基き県販連を通じ、県信連に対し右代金の支払を請求しその係員をして正当な供出米代金の請求と誤信せしめ同月九日県信連に対する志田村第一農業協同組合の預金としてその口座に右代金を振り込ましめよつて前記二俵分の供出代金八千八百八円の財産上不法の利益を得
第二、被告人岩崎英夫は前同様刺米及び供出の際生産者が量目不足のとき補充すべく持参し不用になつた所謂端米その他組合で保管中の供出米を改秤し、規定量より重い俵より抜き出した米等を組合経費に充てるため供出してその代金を騙取しようと企て、
一、同年三月二十三日右の粳玄米五俵を二、同月三十一日右の粳玄米十八俵をいずれも恰も被告人が生産した米の如く装い匿名供出の手続をして前記組合倉庫において食糧検査官伊藤福雄に対し検査を請求し同人をして正当な供出米と誤信せしめ、これを検査のうえ受領せしめよつて食糧検査官渋谷勇夫をして一、については同月二十八日右五俵を含めその他の供出米とも二百十俵分代金九十二万九千六百二十五円の主要食糧買入代金支払証票を二、については同月三十一日右十八俵分を含め他の供出米とも七十九俵三十瓩分代金三十五万二千百二十円五十銭の主要食糧買入代金支払証票を各発行せしめ、これに基き夫々県販連を通じ県信連に対し右代金の請求をし、県信連係員をして正当な供出米代金の請求と誤信せしめ一、については同年四月四日二、については同月十三日志田村第一農業協同組合の預金としてその口座に右代金を振り込ましめよつて一、の五俵分の代金二万二千二百四十五円二、の十八俵分の代金八万八十二円の財産上不法の利益を得
たものである。
(証拠説明は省略する。)
被告人等の各判示行為は夫々刑法第二百四十六条第二項(判示第一についてはなほ同法第六十条)にあたるから、被告人岩崎英夫、同福原慶治郎に対してはなお同法第四十五条前段第四十七条第十条により被告人岩崎英夫に対しては判示第二の二の罪につき、被告人福原慶治郎に対しては判示第一の一の罪につき夫々併合罪の加重をなしその刑期範囲内において被告人等を夫々主文の刑に処し執行猶予につき同法第二十五条を訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第百八十一条第百八十二条を適用すべきものとする。
なほ被告人石川清治郎の主任弁護人は供出米の検査に際し供出米がその供出者の生産した米であるかどうかは食糧検査官の検査事項でないから本件刺米を供出したとしても食糧検査官を欺したことにならないから詐欺罪は成立しないと主張するけれども食糧管理法施行規則第十四条第十五条によれば供出米は供出者が生産した米でなければならない旨規定されているのであつて食糧検査官が検査に際し特にこの点の検査をしなかつたとしても右規則により生産者の生産した米であることを前提として検査するのであるから供出者が自己の生産しない米の検査を受けることは食糧検査官を欺したこととなり詐欺罪が成立するものといわねばならないから右主張は採用しない。なお被告人石川清治郎に対する公訴中同被告人が被告人岩崎英夫、同福原慶治郎と共謀のうえ判示第一の二の、被告人岩崎英夫と共謀し判示第二の犯行したとの起訴事実は犯罪の証明がないから刑事訴訟法第三百三十六条により無罪を言渡すべきものとする。
よつて主文のとおり判決する。(昭和二六年七月三一日仙台地方裁判所古川支部)